過去との再会
それは何の前触れも無く私の前に現れた。
皆さんは偶然というものを信じますか?
それともこの世には偶然など無く、あるのは必然のみだと考えますか?
私は後者の偶然などこの世に存在しないと思っています。
出会いも別れも
生も死も
勝負事の勝ち負けも。
ならば、この再会という出会いに一体何の意味があり
それは何処を目指しているのか。
私は考える。
友人はこういった。
”最近仲良くなり始めた女の子が現れるとそれと同時に姿を現すよね”
と。
思い返せば確かに、私の周りに少しでも異性の雰囲気が漂うと
その人は突然現れ、私の心を乱す。
世界中の誰よりも会いたくて、
世界中の誰よりも会いたくない
私が愛した人。
私は弱いから過去の記憶にしがみつき
いつかあの日の続きがやってくるのではないかとすがり続けた。
しかし私の迷いに対し、見て見ぬ振りをしていたあの言葉をノアに言われて
私は少し前進した。
そして私達は出会った。
反対車線に止まる彼女の車はあの時と何も変わっておらず、
それはこちらも同様だったが
どうやら彼女は先に気がついていた。
遅れて気がついた私の視線は自然と運転席の方へと向かっていく。
そして目が合う。
信号が変わり、私達の車は走り出す。
時間も遅かったため交通量も少なく、彼女を追いかけ話をすることは出来ただろう。
だが私の頭の中にその選択肢は無かった。
それはきっと強がりだ。
私のプライドだ。
訪れることの無いあの日の続きを追い求めるのはもう止めた。
私達は最後に言葉を交わしたじゃないか。
”5年後、偶然出会えてまた恋に落ちたらまたそこから始めよう”と。
ならばまだその時ではない。
そして私は残りの2年半をただひたすら待つ為に使うつもりも今は無い。
もちろん私の周りに今現在”そういった”話はこれっぽっちもないが
それでも私は待つことは無いだろう。
きっとこれは何かの終わりを告げて何かの始まりなのだ。
再会と呼ぶには一瞬過ぎる出逢いではあったかもしれないが
しかしこれをきっかけに私の世界は動き出すだろう。
それがどのような結末を迎えるかは分からないが
それでも動き出した世界に私は少しに期待を抱いている。
この再会という出逢いが必然ならば
止まっていた歯車が、回転の鈍かった歯車が周りだすだろう。
そんな気がする、なんて曖昧なものではなく
それは間違いないものだと私は根拠など無くとも自信を持って言える。
~車内での会話~
たつ「わーお・・・」
ノア「大丈夫ですか?」
たつ「大丈夫・・・大丈夫・・・。」
ガロ「切るか?」
たつ「いや、大丈夫だ。
・・・ノアの言葉を思い出したよ。」
ノア「この前の”あの日の続きは~”ってやつですか?」
たつ「そうそう。もうあの日の続きは存在しない。私は追わないと決めたんだ。」
ノア「・・・随分と強くなりましたね。心を締め付けられることも無く、顔をみて、目が合ったとしても
貴方は弱音を吐きませんか。」
たつ「不思議とね(笑)
前はすれ違っただけでボロボロになってたのに
人は変わるもんだね。」
ノア「貴方が踏み出す何気ない1歩はあの日から確実に遠ざかってますが
それでもその1歩は間違いなく前に進んでいるのです。
貴方は色々な感情と向き合って時に押し倒し、時に潰されたりして
ようやく振り返って”過去”を見れるようになりました。
貴方はきっと大丈夫、もうちゃんと人を愛せますよ。」
たつ「それは実感ないなぁ・・・(笑)
私はそんな凄いことをしたとも出来る様になったとも思えないから
言われても分からないや(笑)」
ノア「その時がくればいずれ分かりますよ。」
最初の方に出てきた友人の言葉には続きがあり
”まるで貴方の邪魔をしてるみたい。前の時だってそうだった。”
と。
時間の経った今、彼女の気持ちが今も尚、私に向いているとは到底思えない、
期待もしないし、希望も抱かない。
だから私は私の守るべきもの守り、進むべき道を進むのだ。